00序章

あなたは運命の糸の存在を信じますか?

運命の糸とは決して切れない糸です。

赤い糸はどちらかの意志で簡単に切れます。

親子の絆は鎖のように固く簡単には切れません。

運命の糸はどちらかが先にその存在に気づき、相手はなかなか気づきません。

ですがお互いがその存在に気づいたとき、2人は無条件で幸せになるという糸だそうです。

 

01運命の出会い

この物語は、運命の糸で繋がれた2人の物語です。

赤ずきんのおばあさんを食べたオオカミがひとりぼっちになった

赤ずきんを見て、仲間として、いっしょに旅にでる提案をするところ

からはじまります。

敵であったオオカミを本当に恨むことなく、提案を受け入れ仲間とし

て旅に出ることにしたのでしょうか?

 

赤ずきん:ねぇ♪オオカミ、何で私を仲間にする提案したの?

オオカミ:おばあさんを食べた後、普通ならギャーギャーわめくか私に敵意むき出しの目で睨むか、深刻な顔して助けて下さいと懇願してくるのだけど、ずきんちゃんは、ちょこんと座ってこっちを見てたでしょ。何か言わないと思って、つい仲間にする提案しちゃったんだよ。1人で過ごすのも飽きたしね。ちょっと勇気がいったけどね。

赤ずきん:勇気?へえそうなんだ

オオカミ:それより、ずきんちゃん、よく私についてくる気になったね。

赤ずきん:私もなんとなくだよ。済んだことで考えても仕方ないからね。ちょっと面白そうだったし、子分でも奴隷でもなく仲間って言われたんで、それとなにかの糸のようなものが見えたような気がして。

オオカミ:なんとなくか?それとその糸はまだ見ない方がいいと思うよ。

赤ずきん:どうして?

オオカミ:お互いをもっと知ってからみても遅くないから

 

02 子ブタの村

そして、オオカミと赤ずきんは旅の途中、ある村に訪れました。

そこでは3匹の子ブタが自分の家を建てているようです。

 

赤ずきん:ねぇ♪オオカミお腹空いたよ。

オオカミ:空いたね、とりあえず、この村で腹ごしらえしよう。

赤ずきん:うん。早速あの子ブタちゃんたちやっつけて食べちゃわない?

オオカミ:それもいいけど、私はもう少し様子みてからにしたいね。

 

そこで、2人は遠くから3匹の子ブタを観察することにしました。

 

03観察

この3匹の子ブタの1番上のお兄さんの名前はおおブタ

2番目の兄がちゅうブタ、3番目の弟がちぃブタです。

 

おおブタはワラの家をつくることにしました。

ワラをなわでしばって、キュ、キュ、キュと午前中にひとりで

完成させました。

 

赤ずきん:おおブタちゃんは家作るのが早いね。

オオカミ:あんな弱っちい家なんて、私の一息で吹っ飛ぶけどね。

 

おおブタちゃんは、さっさと家を作って、ちゅうブタちゃんのところ

へ行きました。

 

ちゅうブタちゃんは木で家を作っています。

木で柱を作って、そのまわりに釘を打って、トントントン・・・・

 

おおブタ:まだ作っているの?僕はもう出来ちゃったよ。

ちゅうブタ:じゃあお兄さん、手伝ってよ。

おおブタ:ひとの助けを借りるのでなく、自分ひとりで作りなさい。

ちゅうブタ:はい、お兄さん、ひとりでやってみます。

 

ちゅうブタちゃんは一人で頑張って、木の家を完成させました。

おおブタ:自分ひとりで作ることで、家が出来たことの喜びも大きいだろ。

ちゅうブタ:大変だったけど、ひとりで作ったことで自信がついたよ。

 

赤ずきん:おおブタちゃんってさすが長男、いいこと言うね。

オオカミ:そうとも言えないけどね。

赤ずきん:それってどういうこと?

オオカミ:他人に言われて作っても本当の自信になるとは限らないよ。

単にお兄さんに気に入られたかっただけかもしれないしね。

 

 

赤ずきん:あんな頑丈な家だと、息で吹っ飛ばせないんじゃない?

オオカミ:それは心配しなくて大丈夫、息じゃ吹き飛ばないけど、

私の力で体当たりすればなんとかなるよ。

 

そして、ワラの家を作ったおおブタちゃんと、木の家をひとりで作った

ちゅうブタちゃんはちぃブタちゃんのところへ行きました。

ところが、ちぃブタちゃんはレンガを集めただけで、何も作っていません。

 

おおブタ;まだ何もしていないじゃないか?

ちぃブタ:レンガを集めたよ。お兄ちゃんたち。

 

おおブタ:ひとりでちゃんと作れるのか?自分ひとりでやらなきゃダメだよ。ひとりで作って自信をつけるんだよ。

ちぃブタ:お兄ちゃんたちそんなこと言わないで助けてよ。え~ん♪え~ん♪

おおブタ:仕方ないな。じゃあ手伝うか

 

そして3匹の子ブタたちは協力して、レンガの家を作りだしました。

レンガを積んで、ヨイショ、ヨイショ・・・・・煙突も作って

3匹がくたくたになるまで働いて協力して強固なレンガの家を完成しました。

 ちぃブタ:お兄ちゃん達ありがとう。

ちゅうブタ:ひとりで家を作って自信がついたけど、3人で協力して作った方が、より幸せな気分になれたよ。

おおブタ:そうだね。他人に貢献することってこんなに素晴らしいことだとわかってよかったね。

 3人の子ブタ達は、自分ひとりで作ることの喜びより3人で協力することで、より大きな喜びを得ることを覚え、3人の絆は深まりました。

 04考察

オオカミ:ずきんちゃん、この3人の中で誰が一番幸せだったと思う?

赤ずきん:それは2人の兄に協力してもらってレンガの家を作ってもらったちぃブタちゃんでしょ。一番得しているもん。

オオカミ:それはどうかな?損得の喜びより、他人を助けた喜びの方が大きいんじゃないかな。泣いて家を造ってもらったちぃブタちゃんが本当に幸せだとは思わないけどね?弱さを武器にして家を建ててもらうことが幸せなのか疑問だよ。

赤ずきん:そう言われれば、そうだね。

オオカミ:弟を助けた兄2人の方が幸せじゃないのかな?まあ本人たちじゃないからわからないけどね。ちぃブタちゃんがあのレンガの家をひとりで作れたのかどうなのか?何か目的があって3人で作るようにしたのかで、見方が変わってくるんだけどね。もしかしたらちぃブタちゃんは手強いかもしれないよ。

赤ずきん:ふ~ん。

オオカミ:私もこうしてずきんちゃんと旅をして、ずきんちゃんの役に立っていると思うと、とても幸せだよ。愛しているよ。

赤ずきん:おい♪オオカミ、そんなキショい台詞はいいから、あの頑丈で強固なレンガで作られた家をどうやって攻略するんだ?

オオカミ:どうだろう?頑丈に作ればいいってもんじゃなからね、頑丈に作るってことで欠点もあるんだよ。3つの家も完成したことだし、そろそろ子ブタたちに宣戦布告といこうかね。ずきんちゃん、宣戦布告の文章考えておいてね。

赤ずきん:うん

 

05宣戦布告

宣戦布告

3匹の子ブタたちへ

「お腹がすいているので、食べます。」

赤ずきんとその子分のオオカミ

 

オオカミ:とても簡潔でいいのだけど、私はいつから子分になったのだい?

赤ずきん:今でしょ。

オオカミ:その台詞どっかでき聞いたことあるな?まあいいや。

赤ずきん:こっちは2人で、そっちは3人だから人数ではこっちが不利だから文句は言うなよっての付け加えた方がいいかな?

オオカミ:そういう言い訳がましい文章は品がないから却下だよ。そもそも人数が少ない方が不利とは限らないし、不利な方が弱くて正義ってわけでもないでしょ。こちらはお腹が空いたからって食べる方だよ。

赤ずきん:うん。ごめんなさい。

 

06開戦

翌朝、赤ずきんとオオカミは3匹の子ブタに、宣戦布告文を送って戦いが始まりました。

 2人はまず、おおブタちゃんのところに行き、おおブタちゃんにオオカミが言いました。

 オオカミ:おおブタちゃん。降参して君が食べられるなら他の2人は助けてあげるよ。

赤ずきん:ねぇ♪オオカミ脅すとか、ちょっと卑怯じゃない?

オオカミ:自分を犠牲にして、他の2人を助けるって美しくないかな?世の中ではリストラが流行ってるでしょ。

赤ずきん:リストラって従業員をクビにするやつ?

オオカミ:そうだよ。それってこういうことなんだよ。1000人の従業員がいたら、300人を犠牲にすることで、残りの従業員を助けるってことだよ。300人には残酷だけど、残りの700人は助かるからね

赤ずきん:ただの脅しとは違うんだね。リストラと似てるね。

オオカミ:経営者って、そういう残酷な決断もしなきゃいけないんだよ。とはいえ、経営者自身も助かっているから、美しいこととは私は思わないけどね。

赤ずきん:じゃあ同じようにおおブタちゃんが助かる提案したら?

オオカミ:それは美しくないから却下だよ。

赤ずきん:うん。

おおブタ:お前の言うことなんか信じられるか。降参などしない。

 オオカミ:私たち信用ないね。

赤ずきん:オオカミって怖いって決まってるからね。人を見かけで判断すると、痛い目合うって教えてあげれば。

オオカミ:見かけで判断するのは仕方ないよ。私のことおおブタちゃんは知らないからね。知らない人を判断するのは容姿や噂しかないでしょ。そういう意味ではおおブタちゃんは間違ってないよ。ただ、簡単に結論だして交渉しないのにはちょっと問題あるけどね。

赤ずきん:それってどういうこと?

オオカミ:私を信じるとおおブタちゃん自身はどうなると思う?

赤ずきん:私たちに食べられて死んじゃう。

オオカミ:そういうことだよ。さあ攻撃するか。

 オオカミは息で、ワラの家を吹き飛ばしました。おおブタちゃんは慌てて、ちゅうブタちゃんの家の方に逃げて行きました。

 赤ずきん:楽勝だったね。ところでおおブタちゃん捕まえに追っかけないの?

オオカミ:いや、やることあるからすぐに追っかけなくてもいいよ。

ずきんちゃん、散らかったワラを束ねてまとめておいてね。

赤ずきん:後片付け?まあそれくらいならするよ。頑張ってくれたし。

オオカミ:後片付けとはちょっと違うのだけどね。

それとまとめたワラを次のところまで運んでくれる?

赤ずきん:軽いし、これくらいなら私ひとりで持てるからいいよ~♪

 

07中ブタ戦

赤すきんは、散らかったワラをまとめて、オオカミと次のちゅうブタちゃんの木の家に向かいました。

 赤ずきん:今度は私が交渉してみるね。

オオカミ:じゃあお願いするかな。

赤ずきん:あなたたち2人が降参するなら、ちぃブタちゃんは助けてあげるよ。

おおブタ:オオカミといっしょにいるやつなんか信用出来るか、それにさっきと条件が違うじゃないか。2人を食べるつもりなのか。お前は可愛い顔して酷い女だな。この戦争で勝って奴隷にしてやるから覚悟しておけ。

ちゅうブタ:お兄ちゃんかっこいい。あんな可愛い子奴隷にしたいよ。

 赤ずきん:私、可愛いって褒められたのかな?

オオカミ:それはわからないけど、なぜ2人のうちにどちらかが犠牲になったら他の2人は助けるよって交渉しなかったんだい。そのことに気づいてただろ。

赤ずきん:・・・・・どっちみちもう戦うしかなくなったんじゃない。

オオカミ:そうだね。

 オオカミは木の家に何度も体当たりして、木の家はバラバラになりました。

 おおブタちゃんとちゅうブタちゃんは、最後のレンガの家に逃げ込みました。

 赤ずきん:ここで捕まえておかないと、レンガの家は壊せないでしょ。すぐに追いかけなくて大丈夫なの?

オオカミ:どうかな?とりあえずここを片付けて、レンガの家に向かおう。ここの木材はまとめて、私が持っていくよ。

赤ずきん:また後片付け?そんな余裕あるの?

オオカミ:どうだろ?でもここの木材は持っていくよ。

 オオカミは木材、赤ずきんはワラのたばを持って最後の決戦の地、ちぃブタのレンガの家に向かいました。

 08作戦会議

最後の決戦の地、ちぃブタのレンガの家で、3匹の子ブタ達は作戦会議です。

おおブタ:ちぃブタちゃんのおかげで助かったよ。ここはオオカミといえど壊せないだろうからね。これでひと安心だよ。

ちゅうブタ:でもどうやってオオカミを倒すの、オオカミさえ倒せば、あとは弱っちい赤ずきんちゃん捕まえて奴隷にするだけなんだけど?

ちぃブタ:僕にいい考えがあるよ。

ちゅうブタ:どんな作戦だい?

ちぃブタ:このレンガの家が壊せないとわかると、オオカミはどうすると思う?

おおブタ:中に入ってきて力ずくで俺たちを倒すしかないね。

ちぃブタ:だから扉を頑丈に固めて、絶対入れないようにすると、どこからオオカミは入らなきゃいけなくなる?

ちゅうブタ:煙突か?煙突なんか作らなきゃよかったね。煙突にもフタしないと。

おおブタ;そうか、煙突からオオカミを入れるんだよ。煙突の下は暖炉だから煙突から入ったオオカミは暖炉の火で燃やされるってことか。

ちぃブタ:そのとおり、もうこれで僕たちの勝ちだよ。

3人は急いで、扉を内側から頑丈に固め、暖炉に火をつける準備をして待ち構えました。

09最終決戦

そうこうしているうちに、オオカミとあかずきんちゃんがレンガの家の前までやってきました。オオカミはまず、レンガの扉に体当たりをしてみましたが、内側から頑丈に固めた扉はびくともしません。

赤ずきん:全然だめじゃない?どうするの?

オオカミ;だめじゃないよ。簡単に空くかどうか確かめただけだから。

さっき持ってきた木材で、はしごでも作ろうかな。

赤ずきん:ああ、上の煙突から入るのね?

オオカミ:ちょっと違うけど、はしごは作るよ。

赤ずきん:・・・・・・・・・

オオカミと赤ずきんちゃんが、はしごを作っているのを、家の除き穴から見ていた子ブタたちは、しめしめと思っています。

 ちゅうブタ:あとはオオカミが煙突に登ったら、暖炉に火をつければいいね。暖炉に入ったらこっちに入れないように暖炉に檻も造ったし、もう勝ったね。

おおブタ;オオカミが焼け死ぬのも時間の問題だね。

ちぃブタ:あとは可愛い赤ずきんちゃんを捕まえて奴隷にするだけだよ。

ちゅうブタ;僕たち、ブタだとか言われて、全然モテなかったけど、ついに可愛い赤ずきんちゃんを奴隷にできると思うとわくわくするよ。

おおブタ3人で協力して作ったこの信頼の家が僕たちに勝利をもたらすよ。

 オオカミ:はしごも出来たし、これで上まで登れるね。ずきんちゃんレンガのまわりに私の持ってきた木を並べておいてくれるかな?それとも、ずきんちゃんもいっしょにはしごで登るかい?

赤ずきん:煙突から入って、攻撃するんじゃないの?

オオカミ:何でもかんでも力で解決しようとすると、限界がくるだけだよ。子ブタちゃんたちも頑丈な家を造って力で対抗してきているだろ。力と力のぶつかり合いでは、もうこちらは負けてるよ。それに全部、力で解決しようなんて品がないから私は嫌いだね。

 10子ブタの醜態

オオカミがはしごを使って煙突まで上がってきたとき、3人の子ブタたちは暖炉に火をつけました。オオカミが入ってくるとオオカミは一貫の終わりです。

しかし、オオカミは中に入らず、赤ずきんちゃんの持ってきたワラを煙突から入れて煙突にフタをしました。レンガの家の中はワラが燃え、煙で充満して、扉を内側から閉めたレンガの家から3匹の子ブタは出ることもできません。

ちゅうブタ:煙だらけで目が痛いよ。オオカミは煙突から入ってきたの?

おおブタ:ワラを入れただけで入ってきてない。

ちぃブタ:オオカミの作戦にやられたよ。もうどうしようもない。

ちゅうブタ:なんでこうなったんだよ。お兄ちゃんがオオカミの条件をのんでおけば僕たち2人は助かってたのに。

おおブタ:お前だって条件のまなかっただろ。俺だけのせいにするなよ。

ちぃブタ:お兄ちゃんたち酷い。自分たちが助かるために僕まで巻き添えにしたの?

おおブタ:そもそもこんな頑丈な家作るから、逃げられなくなったんじゃないか、こんなに頑丈でなかったらバラバラに逃げたら全員死ななくてすんでたよ。

ちぃブタ:さっきまで頑丈に作って助かったって言ってたじゃない・・・・・・・

ちゅうブタ:煙で息ができなくて苦しいよ・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やがて3匹の子ブタは全員死にました。

 

11勝利

赤ずきん:なんか急に最後にあの3人の仲悪くなったね。

勝負に勝つだけでなく、心まで砕いて、兄弟の絆まで壊すんだね。

オオカミ:心まで砕いた覚えはないけどね。子ブタちゃんたちが苦しんだのは私のせいじゃないよ。苦しむのは自分のことばかり考えているときだよ。苦しむときって相手のこと考えているようでも全て自分のことを考えているということだよ。

赤ずきん:どういうこと?

オオカミ;例えば自分はこれだけやっているのに、他人はしてくれないとかいう人多いでしょ。

赤ずきん:うん

オオカミ:他人の自由を尊重できないで、やってくれないから相手のせいにして勝手に悩むなんてちょっと考えたら、有り得ないことだと気付くはずなんだけどね。自分のことだけ考えているから相手が悪いってなっちゃう。

赤ずきん:それってストカーみたいだね。

オオカミ:つきつめて考えると目的が全て自分のためなんだよね。

赤ずきん:あんな死に方したくないな。安らかな気持ちでいられるかな?

オオカミ:最初に私に会ったときのこと思い出すと自然と答えは出てくるよ。私を信用してなかっただろ。

赤ずきん:信用してくれってこと?

オオカミ:そんな迷惑なことやめてほしいね。信用に一人で答え続けるのは無理だよ。

12二人の晩餐

その後、オオカミは煙突から降りて、レンガの家のまわりに並べた木材を燃やしました。

 オオカミ:煙で子ブタたちの燻製が出来るよ。レンガで作った家をかまどにして、美味しい子ブタの丸焼きが完成だよ。

赤ずきん:子ブタちゃんたち性格悪かったから、ますいかもね?

オオカミ:性格は関係ないよ。それに性格悪いからって素材自体が悪くなるものでもないでしょ。味自体は素材と調理法で決まるものだよ。兄たちが途中で降参してたらレンガの釜度は使えなかったでしょ。

 赤ずきん:つくづく思うがオオカミって、冷たくない?

オオカミ:そうかな? 私は自分ではそうは思ってないけどね。実際、おいしい料理を2人のために作っているから、それで充分でしょ?

 赤ずきん:もう食べていいの?

オオカミ:もう少し焼いてからだね。ブタ肉って火が通ってないと食べたらお腹壊すから。じっくり焼いてからいっしょに食べようね。以前はひとりで食事していたけど、ずきんちゃんといっしょに食べると、とても幸せだよ。

 赤ずきん:うん楽しいね。でも私たち最初から勝つ運命だったってことよね。

オオカミ:ずきんちゃん、それは違うよ。運命なんてものは後から勝手につけた解釈にすぎないよ。

赤ずきん:どうゆうこと?

オオカミ:もし私が子ブタたちの罠にはまって私が死んで、ずきんちゃんが奴隷になっていても運命だと思えるかい?私たちはその場で冷静に考え、最善を尽くして、今を真剣に生きた結果たまたま勝利しただけのことだよ。

 赤ずきん:なるほどそうだね。ところでオオカミ運命の糸って知ってる?

オオカミ:聞いたことはあるけどよく知らないよ。赤い糸なら知っているけどね。

赤ずきん:運命の糸で結ばれた2人は必ず幸せになれるんだって

オオカミ:私には必要ないよ。

赤ずきん:絶対に幸せになれるのに?

オオカミ:私には目標があって、私が死んでもいっしょにいた人を決して嘆き悲しませないことかな。母がそうだったからね。

赤ずきん:・・・・・・・・・・・・・・・

オオカミ:何か聞きたそうなことがある顔してるけど。

赤ずきん:おばあさん殺したの誰?

オオカミ:食べたのは私で間違いないよ。猟師のおじさんは私を見たとたん逃げていったよ。

赤ずきん:一人で居る前はお母さんといたの?

オオカミ:そうだよ。それも私が食べたけどね。

赤ずきん:どういうこと?

オオカミ:2人で旅をしていて獲物がいなくてね。死にかけた私を自分の命を絶って私を助けたんだよ。とても穏やかな顔して死んでたね。

赤ずきん:悲しくなかったの?

オオカミ:母は凄く私を愛してたからね。それを私がちゃんと理解していたから母は簡単に私のために死ねたよ。私が悲しんだら母は報われないでしょ。

オオカミ:私も聞くけど、なぜ煙突まで登ってこなかったんだい?私の作戦知っていて、知らないふりしていたから、てっきり登ってくるものだと思っていたよ。

赤ずきん:死を覚悟した勇気ある人といっしょに食事したくなったからかな?もう、あんな覚悟は必要ないよ。美しいだけの目標もいらない。これからの目標はどちらかが死んだとき、この人といっしょにいて良かったって思えるようにしましょ。

オオカミ:ありがとう。

赤ずきん:この楽しい旅はいつまで続くの?

オオカミ:どちらかが死ぬまでだよ。死んだらもう考えられないからね。

赤ずきん:考えられなくなってから感じればいいのね。運命の糸ってあるのかな?

オオカミ:よくわからないけど、もしあるとしたらこれから2人で作る糸だよ。

赤ずきん:うん